PROJECT STORY
プロジェクトストーリー
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新規事業「ハグウェル」がスタート。
動物病院設立までの道のりと、
未来への想い。

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ペットの健康寿命を守る、新たな挑戦
ペットに対しても、人の一生と同じように寄り添いたい――ベイシアグループの中核企業であるカインズでは、これまでもペット用品の販売やトリミング、ホテルサービスを通じて、ペット(ハグウェルでは愛情を込めて「動物さん」と呼んでいる)との暮らしを支えてきた。しかしある時、社内の議論で「もし、家族であるペットに何かあった時、カインズとしてどこまで支えられるのだろうか?」という疑問が生まれる。
この瞬間こそが、ベイシアグループにおける「ペットのヘルスケアサービス」という新たな事業創出の起点となった。ただし、そこで理想として掲げられたのは、従来型の動物病院とは異なる構想。予防・健康診断から高度・専門医療までを一気通貫で対応する動物病院をコアに、トリミングやホテルも併設したヘルスケアサービス複合施設を展開し、「大切な動物さんの健康と、家族みんなの歓びを、育み続ける」というもの――それが、ハグウェルがめざす姿だった。
この全体構想は、約3年前にはすでに動き出していた。既存病院をM&Aで取得する選択肢もあったが、「ハグウェルが理想とする医療とケアを実現するには、ゼロから立ち上げる方が早い」と判断。ベイシアグループ総研に専門チームが組成された。
動物医療経験ゼロの素人集団が、未知の領域に飛び込む。その中心にいたのが、立ち上げ当初から参画したベイシアグループ総研事業開発部シニアマネジャー、渡邉亮だった。専門家を巻き込みながらのコンセプトの精緻化、物件探索、人財採用、医療機器の調達、アプリ開発、病院オペレーションを確立し、着実に一歩ずつ、理想の施設像を形にしていく――。無数の壁を前に、何度も立ち止まりながら、チームは一歩ずつ道を切り拓いていくことになる。
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乗り越えてきた数々の壁
ベイシアグループの経営理念「For the Customers」をベースに、家族と動物さんがともに健やかに暮らせる社会の実現を目指して設立されたハグウェル。
だが、ゼロからの事業立ち上げは、渡邉にとって想像した以上に困難な道のりだった。どのようなヘルスケアサービスを提供するのか、どのような価値を届けるのか。そして、その仕組みを誰と、どうやってつくるのか。ゼロからヘルスケアサービスを立ち上げるという全てが手探りのミッションの中で、幾多の壁に直面しながらも、チームはその一つひとつをどうやって乗り越えていったのか――
まず最初に向き合ったのは、「ハリネズミ経営」に基づく“尖り”の定義だ。動物さんと飼い主様に真に必要とされる価値とは何か――。チームで何度も議論と仮説検証を重ね、コンセプトを磨き上げた。しかし、簡単には「正解」が見えない不安に襲われる日も少なくなかったという。
さらに、動物医療業界特有の慣習や文化との衝突もあった。診療データの管理方法やスタッフの働き方、医療サービスの在り方──。理想とする「新しいヘルスケアサービス」を追求しようとすればするほど、現場から上がる声や従来の仕組みとのギャップに苦しむ場面があった。それでも渡邉は、「本当に目指したい未来」を諦めず、チームとともに一つずつ打破していった。
人財確保の壁も、渡邉を何度も悩ませた。獣医師、動物看護師、トリマー――即戦力人材の採用競争は厳しく、ただ求人を出すだけでは想いは届かなかった。それでも逆境の中で渡邉は、自らの言葉で「ハグウェルの未来像」を熱く語り続ける。人材エージェントにも想いを共有し、同志を増やすために奔走した日々。結果、ハグウェルが掲げるビジョンに共感するかけがえのない仲間たちに出会うことができた。
加えて、異なる専門領域から集まった初対面同士のメンバーで、信頼を築くのも容易ではなかった。忙しさの中ですれ違いも起こったが、チームであきらめずに対話を重ね、外部専門家の力も借りながら、一体感を高め続けていく。
数えきれないほどの壁と葛藤。それでもチームは、「動物さんと家族のために」という原点に立ち返ることで何度でも前を向き、歩みを進めていった。
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初めての成功と手応え──
“想い”が届いた瞬間開院から間もないある日に入った、高齢で持病を持つワンちゃんのトリミング予約。
飼い主様は、「何件かサロンを回ったけれど、年齢や体調の理由で断られてしまって…ここも難しいかもしれないと思いながら来ました」と不安な面持ちだった。ハグウェルは、「年齢や健康状態に関わらず、できる限り寄り添う」ことを掲げている。
この日も「自分たちがワンちゃんと飼い主様の苦しみと不安を和らげる」という想いで獣医師とトリマーが綿密に連携した結果、ワンちゃんの健康状態が丁寧に確認され、負担を最小限に抑えた施術が実施された。無事に施術を終えた後、飼い主様は満面の笑顔と共にこう語った。
「ここまでうちの子のことを大切にしてくれた場所は初めてです。本当にありがとうございました」
その言葉に、チームの胸は熱くなる。
「想いは届く。ハグウェルは本当に求められている。自分たちが信じた道は間違っていなかった」
開業準備から試行錯誤の連続だった日々。この施設の存在意義が形となり、 これまでの努力と苦労が、すべて報われたように感じた瞬間だった。
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飼い主の理解と信頼を深め、
ペットの「予防医療」の定着を目指す開業から1カ月余り。
横浜鶴ヶ峰院では、獣医師、動物看護師、トリマー、受付スタッフなど約10名のチームが、理念を共有しながら日々の診療・ケアにあたっている。小さな規模ながらも、ハグウェル独自の医療とケアを一体化したコンセプトが、確かな手ごたえとして支持を集めつつある。だが、チームの視線は次の大きなテーマ、「予防医療の定着」に向いていた。
まだまだ「健康なときに健康診断を受ける」という意識は浸透していない。「健康診断って何のために必要なのか」――飼い主様たちの中には、まだまだそんな疑問が大きく残っている状態だ。
「診療するだけではなく、動物医療のプロフェッショナルである獣医師や看護師が、飼い主様一人ひとりと丁寧に対話をすることで、理解と信頼を少しずつ積み重ねていくこと。地道に啓蒙を継続していくことこそが、これからの「予防医療」の定着に向けた第一歩につながるはず」渡邉はそう信じている。
「来院数の増加に合わせ、人員体制のさらなる強化も見据えています」
渡邉が見据えるのは、自ら乗り越えてきた数多の壁のさらに先にある、確かな未来。
すでにスタートを切ったハグウェル動物総合病院の取り組みは、小さな一歩を着実に積み重ねながら、今後も動物さんと飼い主様の暮らしに新たな価値を届けていこうとしている。